【活動報告】法文学部附属「鹿児島の近現代」教育研究センターを設立 記念式典、センターの公開および記者発表を行いました(10/1)
令和4年10月1日、「鹿児島の近現代」教育研究拠点整備事業の取り組みを実際に推進する機関として、「鹿児島の近現代」教育研究センターが設立されました。
10月1日、郡元キャンパス総合教育研究棟2階ロビーで開所式を執り行いました。式には、佐野 輝学長、越塩 俊介理事(総務担当)、岩井 久理事(企画・社会連携担当)の他、学内の部局長や来賓の松尾 千歳尚古集成館館長など21名が出席し、佐野学長、松田学部長の挨拶に続き、センター長と新規採用の特任教員2名から、自己紹介と挨拶がありました。続いて、新しいセンターの発足を記念して、テープカットを行いました。
関係者による記念撮影の後、センターのある3階に移動し、看板の除幕式とセンター内部の公開も行いました。センターには、鹿児島の近代から現代にかけての地図が複数展示されており、出席者の皆様は興味深くご覧になっていました。
センター内部のご案内に続いて行われた記者発表では、多くの質問が寄せられ、当センターに対する記者の方々の関心の高さがうかがえました。これらの模様は、当日から10月4日にかけて広く報道され、県民の皆様にも当センターのことが一定程度認知されたことと思います。
今後は、徐々に増えつつあるお問い合わせにもお応えしながら、着実に活動を進めてまいります。
≪法文学部 松田学部長 開所式挨拶全文≫
本日は、佐野学長はじめ、本学理事、部局長、ご来賓の皆様のご臨席を賜り、法文学部附属「鹿児島の近現代」教育研究センターの開所式が挙行できますことに、法文学部長として、この上ない喜びを感じております。
また、学内関係者の皆様には、このセンターの設立に際しまして、ご理解と多大なるご支援を賜り、誠にありがとうございます。法文学部の教職員を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。
先ほど、佐野学長に賜りましたご挨拶でもご紹介がございましたが、ここ鹿児島は、幕末から明治にかけて、明治維新を牽引するとともに、わが国の近代化を推進する原動力となった多くの偉人を輩出いたしました。
これに加え、鹿児島は、古くから進取の気風に富み、鎖国の時代にあっても、海外との交流をすすめて、異国の進んだ文化や技術を積極的に取り入れ、社会実装や地域イノベーションのために、これを活用して参りました。このような取組の痕跡は、世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」を構成する歴史的遺産として、この地に残されています。
また、鹿児島には、多くの離島が存在し、その豊かな自然環境の一部は、「世界自然遺産」として登録され、世界的にも脚光を浴びています。さらに、歴史的経緯や地政学的特性を背景にして、鹿児島では固有の文化や伝統が育まれ、これらは世代を超えて現在に伝えられています。
このように、鹿児島には他の地域に見られない歴史、文化、社会、自然に関する豊富な地域資源が存在します。
しかし、鹿児島には、公文書館が存在しないという事情もあり、特に、歴史的価値を有する資料の保存は、公立または民間の博物館などに頼らざるを得えないという現状です。また、地域の学校、企業、さらには、一般の私宅に散在している可能性のある、近代に関する資料については、未だ詳細な調査が行われておらず、これらに関する情報の集約もなされておりません。そのため、古いものは加速度的に失われていく状況にあり、このことは、地域にとって大きな損失をもたらすおそれがあります。
本学に目を転じますと、附属図書館には、島津久光および玉里島津家の蔵書であった「玉里文庫」をはじめ、高等農林、旧制七高関係の資料など、歴史的価値を有する多数の書籍などが所蔵されています。これらの資料については、これまで、関連分野の研究者が中心となって、保存および教育研究活動への活用に尽力して参りました。しかし、本学には、近現代史・近現代文学を専門とする教員が不在であること、この先、これらの活動に関与してきた教員が退職により減少していくことから、今後、これらの資料を活用した教育研究をどのように展開していくのか、ということが学内でも大きな課題とされていました。
そこで、こうした、鹿児島や本学が抱える課題を解決するために、昨年度より、法文学部が中心となって、「鹿児島の近現代」に関する教育研究拠点整備に取組み、その一環として、これに関する教育研究センターを設立し、新たな教員、研究者の配置を含め、組織的に、歴史的貴重資料の収集・保存・デジタル化と、これらの教育研究への活用を推進するという構想に至ったのであります。
また、この拠点整備に向けた検討プロセスにおいては、歴史的資料だけでなく、その他の多様な地域資源を活用した、教育研究を推進し、その成果をもとに、地域活性化に資する人材の育成や地域の課題解決にも取組むべきだ、という声も高まって参りました。そのため、最終的には、このセンターには、鹿児島の地域資源を活用した地域活性化策を地域に提案していくという、いわゆる地域マネジメント的機能も備えさせることになりました。
こうしたセンター構想は、佐野学長のリーダーシップのもと、本学執行部、さらには、各部局長の先生方のご理解のもと、先日お亡くなりになられた、稲盛和夫京セラ名誉会長・本学名誉博士のご寄附により創設された、「鹿児島大学稲盛和夫基金」からのご支援を賜ることにより、これをすすめさせていただくことになりました。
「鹿児島の近現代」教育研究センターの名称に含まれる「近現代」という文言には、鹿児島が主役を担った、「近代」の視点に立って、鹿児島という地域を再び見つめ直し、現代の鹿児島が抱える諸課題の解決にチャレンジしていく、という意味も込められています。
このセンターは、法文学部の附属組織として設立されましたが、人文社会科学分野の研究者だけでは、貴重な地域資源を最大限に有効活用した教育研究の推進、地域マネジメント事業は展開できません。本学の自然科学分野の研究者にもご支援を賜り、「鹿児島の近代」、「地域資源の活用」といったキーワードをもとに、本学の様々な分野の研究者がここに集って、分野横断・文理融合による教育研究活動を行い、複雑化する現代の地域社会が抱える課題の解決に向けた取組を行って参りたいと考えています。
さらには、地域のニーズを的確に把握した取組が展開できるよう、広くセンターの門戸を開き、地域の皆様や鹿児島に関心を寄せていただいている皆様にも、センターの活動に積極的に参画していただける仕組みづくりも行って参りたいと思います。
本学は、第4期中期目標・中期計画期間における基本目標として、「持続可能な社会の実現に向けて、引き続き南九州及び南西諸島域の『地域活性化の中核的拠点』としての機能を強化」することを掲げています。また、この目標のもと、地域・産業界と連携して、地域産業や自治体等が抱える課題の解決に取り組むとともに、研究成果の活用と社会実装を推進し、地域イノベーションの創出に取り組むことを本学のミッションと位置づけています。
本センターは、本日、産声を上げたばかりです。皆様のお力添えをいただきながら、こうした本学のミッションの実現に貢献できるような組織に成長させて参りたいと思います。
どうか今後ともご支援をよろしくお願い申し上げます。
令和4年10月1日
法文学部長 松田忠大