本センターについて

「鹿児島の近現代」教育研究センターとは

鹿児島の「近現代」の教育・研究およびその成果の地域への還元

本センターは、旧藩時代から明治・大正・昭和に至る近代化に関する歴史的遺産、地域的特徴のある文化、世界に誇れる自然環境など、鹿児島の地域資源を用いた教育研究活動を推進します。

教育研究基盤整備事業と地域マネジメント教育推進事業の二つの柱を立てています。前者は文字資料のみならず非文字資料をも対象に、史的なアプローチにより研究を推進し、鹿児島の近代とは何だったのかを問います。後者は現代的な課題の解決に向けて文理融合、分野横断的に新しい技術を駆使して実践的な教育研究に取り組みます。

これらの成果を社会実装や地域イノベーション創出の形で地域に還元します。

組織図

法文学部長より

鹿児島大学法文学部長 松田 忠大

「鹿児島の近現代」教育研究センターの設立にあたって

日本の近代化を牽引した鹿児島には、そのプロセスを物語る歴史的に貴重な史料が数多く存在します。2015年に世界遺産として登録された「明治日本の産業革命遺産」に含まれる旧集成館事業の遺構や資料はそのひとつです。このほか、公立・私立の博物館(鹿児島県歴史・美術センター黎明館、尚古集成館など)にも、多くの史料が保存されています。

わが鹿児島大学も19,000冊を超える島津久光および玉里島津家の蔵書である「玉里文庫」をはじめ、旧制七高や旧制鹿児島高等農林学校関連の資料、岩元文庫などの資料を所蔵しており、これらは附属図書館に貴重書として保管されています。鹿児島の歴史的特性を踏まえれば、地域の学校、企業、私宅には、近世・近代研究にとって重要な資料が未発見のまま、数多く眠っている可能性があります。

また、古くから海外との交流を進めてきた鹿児島には、他の地域には見られない独自の文化や風土が育まれ、後世に継承すべき伝統芸能や民俗行事などの無形文化遺産も豊富です。さらに1993年の屋久島に加えて、2021年には奄美地域も「世界自然遺産」に登録されるなど、鹿児島には世界に誇れる豊かな自然環境も存在します。

このような歴史・文化・自然に関する貴重な史料や資源を有しながらも、鹿児島は一方で多くの地域的課題を抱えているのも事実です。とりわけ、加速度的に進行する過疎化、少子高齢化は地域コミュニティや地域産業の維持・発展に深刻な影響を及ぼしています。新型コロナウイルスの感染拡大はこれに追い打ちをかけ、観光業をはじめとする地域の主力産業に大きな打撃を与えました。

自治体や地域の産業界はこうした地域的課題の解決に懸命に取り組んでおり、鹿児島大学も地域や産業界等との連携を進めながら、「地域活性化のための中核的拠点」となるべく、鹿児島の貴重な歴史・文化資料や自然資源を活用した多くの取組を行っているところです。

しかしながら、地域が有する歴史・文化・自然に関する教育研究活動は、現状ではその多くがそれぞれの分野の枠内にとどまっており、文系・理系の垣根を越えた学際的な教育研究は未成熟の段階にあります。この背景には、歴史や文化などの地域資源を活用した人文社会系の教育研究と理系・自然科学系の教育研究成果をつなぐ仕組みや、地域資源を活用した教育研究の成果を社会実装や地域イノベーションにつなげる制度設計がいまだ不十分であることが挙げられます。

そこでこのたび、全学的な支援のもと法文学部が中心となって「『鹿児島の近現代』教育研究拠点整備事業」の構想を進め、大学と地域をつなぐ拠点となる法文学部附属「『鹿児島の近現代』教育研究センター」を本年10月1日に設立するはこびとなりました。鹿児島の「近代」という歴史的視点に立って、地域の抱える「現代」の諸課題の解決に向けた教育研究活動を展開し、地域の活性化に貢献することがこのセンターの最大の目的です。

センターでは、時の経過とともに散逸していく歴史資料の収集・保存・デジタル化や、地域に散在する歴史資料等に関する情報の集約と一元化を進めるとともに、歴史・文化・自然という地域資源を活用した質の高い教育研究活動を推進します。その推進にあたっては、鹿児島の近現代を専門とする新たな研究者に加え、関連の文系・理系の研究者を兼担教員としてセンターに配置し、分野横断的、文理融合的な教育研究の展開を目指します。

加えて、教育研究の成果がその社会実装や地域イノベーションの創出に向けて活用されるよう、自治体や産業界との連携を強化し、確実にその地域還元がなされる仕組みを作ります。また、次世代の郷土への理解と愛着を深めるべく、地域の小中高校生や大学生、一般市民を対象とした教育プログラムを開発するとともに、地域的な課題を的確に把握し、その解決に向けた取組を担うことができる地域マネジメント人材の育成にも努めたいと考えています。

「鹿児島の近現代」教育研究センターが明治維新を主導した鹿児島の近代に関する最も重要な教育研究拠点になるよう、また地域社会がかつてのような活力を取り戻し、地域の人材や企業が先頭に立って未来を切り拓き、平和で豊かな社会の実現に貢献できるよう、教育・研究および地域連携活動を充実させてまいります。

そのためには、研究者のみならず、自治体、学校、企業、そして何よりも一般市民のみなさまのご理解とご協力が不可欠です。今後ともご支援とご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。