【活動報告】天文館図書館で講演会「乱歩の世界~狂気と心理を読み解く~」が開催されました(2/10)
令和6年2月10日(土)、鹿児島市立天文館図書館にて、弊センターの鈴木優作特任助教による講演会「乱歩の世界~狂気と心理を読み解く~」が開催されました。
本年2024年は、江戸川乱歩生誕130周年にあたります。講演会では、乱歩の初期作品「屋根裏の散歩者」(1925年)を中心として作品の背景について考察がなされました。まず、大正期の東京における遊民の増加、都市化・大衆社会化、犯罪の発生・痕跡の消失、人間関係の希薄化が背景にあることが指摘されました。また、犯人の病的心理とは、1920年代に成立する大衆社会化した大都市に生きる孤独な群衆の心理であり、娯楽の飽和した社会で「刹那的享楽」に趨る大衆の病的心理であることが述べられました。そして、探偵と犯人という対照的な役が正義と悪という二項対立ではなく親近性のある群衆の中の怪しげな人物として造形されていることが論じられました。
さらに、正義と悪の不透明性、不景気と刹那的で過激な享楽への欲望、孤独な群衆といった面では現代とも共通するところがあり、だからこそ100年近くを経た現代においても私たち読者が乱歩作品に共感するところがあるのでは、とまとめられました。
予約定員の30名を大幅に上回る48名の方にご参加頂き、30分間の質疑応答も非常に充実したものとなりました。