【活動報告・地域マネジメント教育研究プロジェクト】高大連携で奄美大島合同巡検を実施しました(9/21-23)
法文学部附属「鹿児島の近現代」教育研究センターの令和6年度地域マネジメント教育研究プロジェクトとして、石田智子准教授(統括)・兼城糸絵准教授(人文学科多元地域文化コース)、中嶋晋平特任助教・伴野文亮特任准教授(法文学部附属「鹿児島の近現代」教育研究センター)は「地域に生きる、歴史を生きる:高大生の歴史実践と協働型価値創造」に取り組んでいます。少子高齢化や過疎化の進行にともない地域の文化・歴史・伝統の担い手が不足し消滅が危惧される現在、地域社会と地域資源(文化資源・自然資源)の未来のありかたについて考えることが目的です。地域資源の発見・記録・保存・活用に取り組み新たな価値を創出する高校生や大学生の活動を支援することで、地域人材や専門人材の育成につなげることを目指しています。
プロジェクトの一環として、鹿児島大学法文学部、鹿児島県立指宿高等学校、鹿児島県立古仁屋高等学校の合同巡検を9月21日(土)~23日(月・祝)に奄美大島・加計呂麻島で実施しました。参加者は、戦争遺跡に関心をもつ鹿児島大学の学生・教員(9人)、探究活動で戦争遺跡や民俗を調査する指宿高等学校の生徒・教諭(5人)、地域の課題解決に取り組む古仁屋高等学校の「まちづくり研究所」の生徒・教諭(5人)、筑波大学(1人)、近畿大学(1人)です。古仁屋高等学校では、鼎丈太郎氏(瀬戸内町教育委員会社会教育課)による瀬戸内町に数多く残る近代遺跡のセミナー、「まちづくり研究所」による西方地区の集落活性化にむけた活動報告をうけて、調査成果と課題への理解を深めました。その後は合同で「奄美大島要塞跡(西古見砲台跡、安脚場砲台跡、手安弾薬本庫跡)」(2023年3月国史跡指定)の現地を訪れることで遺跡の現状確認および今後の活用方法について議論しました。
参加者のコメントを一部抜粋して紹介します。
初めて奄美大島に行きました。私は奄美の戦跡については聞いたことがあるかないかぐらいで知らなかったので、知ることができる良い機会になったなと思いました。加計呂麻島では、小さい島でありながらも、戦争の遺跡はしっかり残っていて、やっぱりすごいなという魅力を感じました。戦跡を見ていくたびにその当時の状況が「こうだったんだろうな」ということが思い浮かび、心苦しくなりましたがすごいと思う気持ちが大きかったです。今回学んだことをもとにこれからの活動に活かしていこうと思います。
すごく楽しかったです。行く前は不安な気持ちでいっぱいでしたが、色々なことを学ぶことができ、奄美大島の綺麗な景色も見ることができ、とても貴重な体験をさせて頂きました。奄美大島は私が想像していたよりも自然豊かで歴史のあるところでした。
普段見ることの無い遺跡の実物を数多く見ることが出来、とても良い経験になった。また、高校生との交流では、高校生たちが精力的に活動している事実を知り、負けていられないなと思った。奄美大島・加計呂麻島にはさまざまな時代の多種多様な遺跡があるほか、集落ごとに受け継がれている風俗や豊富な生態系など数多くの魅力があった。
今回、高大連携での巡検を通して奄美大島や加計呂麻島での戦争遺跡がどのように展示、保存されているのかを実際に見ることができたためとても貴重な体験になった。また、大学生や教員の視点からではなく、高校生の視点からも戦争遺跡や地元地域の歴史について考えるきっかけ作りになったのではないかと思えた。もちろん、私たち大学生も今後の自分たちの卒業論文や研究に繋がるとても良い体験ができたと感じた。 奄美大島や加計呂麻島は本当に自然豊かな場所で、生物多様性をとても大事にしていることが身に染みて感じられた。また歴史的にも重要な遺跡や遺物、文化が多く、今後どのように保存活動を行っていくのか興味が湧いた。
全国的にも、戦争遺跡を活用した歴史実践・地域の価値創造は、まだ始まったばかりだと思います。戦争遺跡は地域の歴史を象徴的に示す場であり、観光・教育など様々な場面で活用されることが期待されています。そこに研究者などの専門家が関わり、保存や活用のために活動することは必要なことだと思いますが、より重要なことは、その議論の場に地元の人びとが参加することだと思います。特に今回のように、将来を担う地元の若い世代が参加することが最も重要なのですが、その場を形成することは、実際にはとても難しいことです。その意味で、課題がありつつも、戦跡を有する地域の高校生、戦跡等の地域資源に関心を持つ他地域の高校生・大学生、研究者・専門家が一堂に会し、交流できたことは大きな意義があったと考えています。
合同巡検の実施にあたりご協力いただいた皆さまに厚く御礼申し上げます。
プロジェクトの成果報告会は2025年1月末に実施予定です。
奄美大島合同巡検の記事が新聞に掲載されました
奄美新聞
南海日日新聞