【活動報告・地域マネジメント教育研究プロジェクト】成果報告会「指宿まるごと博物館 山川鰻窯跡とその周辺」を開催しました(1/27)

「鹿児島の近現代」教育研究センターの令和5年度地域マネジメント教育研究プロジェクトの一つ「近代鹿児島における在地窯業の考古学的研究」(法文学部教授・渡辺芳郎)の一環として、1月27日(土)に、指宿市考古博物館時遊館COCCOはしむれにおいて、「指宿まるごと博物館 山川鰻窯跡とその周辺」と題する成果報告を行いました。鹿児島大学法文学部考古学研究室と指宿市教育委員会との共催です。

「指宿まるごと博物館」は、指宿市教育委員会が進めている事業で、指宿市全体を「野外博物館」ととらえ、市域にある文化財、自然、産業、施設、郷土芸能、伝統行事、イベント、人の記憶などすべてを貴重な「展示品」と位置づけて、それらを教育・まちづくり・観光振興に活かしていく取り組みのことです。

報告会では、西牟田瑛子氏(指宿市教育委員会)により、「指宿まるごと博物館・鰻池エリアについて」が報告されました。鰻池エリアは温泉地として有名であり、明治7年に西郷隆盛が湯治のために滞在したことで知られています。また火山性天然蒸気カマドである「スメ」は、鰻地区の多くの家庭にあり、サツマイモや卵などを蒸します。『三国名勝図会』(1843年)にもすでに記述が見られます。

渡辺芳郎教授は、2015年度から2020年度まで、考古学研究室が実施した鰻窯跡の発掘調査成果について「鰻窯跡の発掘調査でわかったこと」と題して報告しました。鰻窯跡は、燃焼室+3焼成室の連房式登窯で、その窯構造や発掘で出土した製品や窯道具から、「薩摩焼の郷」として知られる苗代川(日置市美山)の技術の系統を引くことが明らかになりました。また鰻地区に残る、明治の終わり頃に苗代川から来た「伊集院どん」と呼ばれる夫婦が開窯したという伝承と一致することを示しました。
なお本調査の成果については、2月に『鹿児島県指宿市山川 鰻窯跡の調査と研究』という報告書が刊行されます。

また報告会終了後には、鰻窯跡出土遺物が会場で展示され、渡辺教授から説明がありました。

報告会は対面とオンラインのハイブリッドで開催され、対面37名、オンライン8名の参加者を得ました。会場には指宿市の地元の方々が多く参加され、活発な質問が出されました。

指宿市教育委員会の関係者の方々、対面・オンラインで参加していただいた皆様に、あつくお礼申し上げます。